南風

近頃、夜になると湿気が高まる。
空気が肌にヒタっとまとわりつき、そのねっとりした加減とともに眠気もやってくる。
朝、太陽が登れば、それはさらっとした空気に変わる。

ちょうど今の時期、南風が吹き湿気を運んでくるようだ。
これをプスピローマヌパイカジ(星昼間の南風)と呼ぶそう。

太陽が空の頂点に来る昼間のように、星にも一番輝ける昼間がある。
この昼間に吹く南風が、星昼間の南風。

星が上がれば風が吹き、私は眠りにつく。
湿気のようにトロンとして、南風と同化する。

ふたつの心

心にはふたつある。

ひとつは身体を制御し物質的に支配する心。
もうひとつは身体的作用から知覚を移り変えていく心。

近頃はなるべく後者の心を許し、
ただの岩にさえこの心を変えてくれよと願っている。

削る

毎日引き算の練習で、いくらでも引いていけるような気になる。
いつしか自分の身さえも極限まで削れていき、ただ空になることを望む。

何か

何者でもない私達は、また何者でも亡くなっていく。

things

尊いものを生み出したいと思う。
尊い、は強制されず、自然に発生するものだ。

dance

何を象徴しているのかを常に考えること。

photography

人は悲しいくらいに簡単に忘れる。
だから写真にするのだろう。

killer whale

本気で数十年かけて体と精神を「シャチ」に変えようとしている人の話を聞いた。

そもそも何が人を人たらしめているのかという問題もあるのだが、これほどまでに「シャチになりたい」という、一見無謀としか思えないことを本気で実行している姿に心を動かされた。

何かに「なる」ことを強く欲する力の源は、自分自身の開放についての欲求でもあり、既成概念が盲目的に強いる抑圧から脱却することを意味する。

私は何になりたかったのだろうとぼーっと考えてみた。

あらゆる悩みに答えを出せるようになりたい。生きていることの意味や価値について一通りの答えを出したい。すべてのことについて知識を得た後に見える景色を見てみたい。

これまで禅問答のように繰り返してきた受け答えさえも、人間的な前例のある形を踏襲したに過ぎない。

一方これまで「シャチ」になった人はいない。シャチになることは前人未到の挑戦でもある。例え思うようなシャチになれなくても、シャチになれると信じて最大限なろうとすること。

こういう思いをどこかにしまい込んでなかっただろうかと自問自答する。

私の中の「私」は、私以外の誰にも見いだせないのだと気づく。

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