killer whale–
本気で数十年かけて体と精神を「シャチ」に変えようとしている人の話を聞いた。
そもそも何が人を人たらしめているのかという問題もあるのだが、これほどまでに「シャチになりたい」という、一見無謀としか思えないことを本気で実行している姿に心を動かされた。
何かに「なる」ことを強く欲する力の源は、自分自身の開放についての欲求でもあり、既成概念が盲目的に強いる抑圧から脱却することを意味する。
私は何になりたかったのだろうとぼーっと考えてみた。
あらゆる悩みに答えを出せるようになりたい。生きていることの意味や価値について一通りの答えを出したい。すべてのことについて知識を得た後に見える景色を見てみたい。
これまで禅問答のように繰り返してきた受け答えさえも、人間的な前例のある形を踏襲したに過ぎない。
一方これまで「シャチ」になった人はいない。シャチになることは前人未到の挑戦でもある。例え思うようなシャチになれなくても、シャチになれると信じて最大限なろうとすること。
こういう思いをどこかにしまい込んでなかっただろうかと自問自答する。
私の中の「私」は、私以外の誰にも見いだせないのだと気づく。