JOURNAL
kumano–
しばらく南島を離れ熊野を旅していた。そこは国生みの神話と伝承が生まれる地域に相応しい風土があった。その土地の文化と秩序は人間の精神に日々作用する風土によって大きく異なっていく。幾世代にも渡りそれらを強化し続けた集落は特異な体系を生み、またその土地の人々は固有の風土的体系を前提として現象を把握し、過去を背負う。
しかしこれらはたかが数百年程度の出来事でもある。単純にこういったものを豊かさと一括りにすることはできない。風土が違いを生む一方、それらを結びつける論理も生まれる。南方熊楠はそれを「萃点」と称した。
私達は互いに違い合いながらもどこかで繋がりたいと感じている。無関心ではない形で、しかし関心を強要しない社会で。複数であること、流動的であること。その中で統合と分裂を繰り返していること。こんな粘菌のような意識があるとしたら、それはどのような「人」なのだろうか。